わかっているのに間違えるワケ
わかっていても、人はバイアスによって思考に不具合が発生します。しかも、バイアスを取り除くことは非常に難しいです。
バイアスの影響を少しでも減らすためには、バイアスについて知り、注意するだけでは十分ではありません。
さらに、人は「自分はバイアスにとらわれない」という思い込みもあります。
それでは一体どうすればよいのでしょうか?
そこで今回から、アン・ウーキョンさんの『イェール大学集中講義 思考の穴』で認知心理学について学んでいきたいと思います。
流暢性
何度も見ていると・・・「自分にもできそうだ」と感じるようになります。繰り返し見ていることで、頭の中でスムーズに処理ができるようになり、「簡単そうだ」と思うようになります。
このことを「流暢性(りゅうちょうせい)」とよびます。
流暢性による錯覚が発生すると、実際にするときの難しさを過小評価するようになります。
また、何かを判断するときに、本来は無関係な要素によって判断が変わってしまうこともあります。
たとえば、「名前」によって判断が変わることがあります。発音しやすい名前と発音しにくい名前があった場合、発音しやすいものの方が評価が高くなる傾向があります。
本来、名前が発音しやすいかどうかは中身に関係がないはずですが、無意識のうちに評価に影響を与えています。
無関係な知識が影響を与える
何かわからないことがあると、インターネットを使用して検索する。これは日常的に行われていることですが、この「検索する」という行動も影響を与えています。
Aグループ:1問目は検索して答えを探す。 2問目は検索なしで答える。
Bグループ:1問目も2問目も検索なしで答える。
このような実験をしたとき、2問目はどちらのグループも検索していないにもかかわらず、AグループはBグループに比べて、自分の解答に自信を強く持っている傾向がありました。
何か専門的な情報を手に入れることで、実際以上に自分には知識があると錯覚してしまったということです。
流暢性を克服するには?
では、流暢性の影響から逃れる方法はあるのでしょうか?
それは「ただやってみる」ということです。「できる」と思い込んでいる状態をうちやぶるには、自分でやってみることで、できるかできないかがわかります。
(そんな当たり前のことを・・・)と思うかもしれませんが、実際に「やってみる」という人は少なく、頭の中で思い描いてみるだけで「やったみた!できそうだ!」と思ってしまうこともあります。
知識への過信対策
学習をしてみることで、実際に身についている以上の知識があると思い込むことがあります。
その対策は「知識を書き出す」ことです。
「○○について知っていますか?」と質問されたときに自信度を1点〜7点で採点をしてもらうという実験があります。
最初にアンケートをとると、参加者の自己評価の平均点は4点でした。
そのあと、実際に「○○について知っていることを書き出してください」という実験をしてみると・・・自分の知識が実際にどうかはっきりとします。
その結果、実験後には自信度の平均点が下がる傾向がみられました。
説明を求めると、人は謙虚に自分を見つめるようになります。
計画はどうしても甘くなる
目標を立てて、「明日までにこれを終わらせよう」と思って取り組んでいたところ、全く時間内に終わらなかった・・・
という経験があるかもしれません。
人が何かを完了するために必要な時間とエネルギーは、少なく見積もられることが多くなっています。
そのため、しめきりに遅れる、予算がオーバーするということがよく起きるのです。
これは「希望的観測」が原因です。すばやく、予算やエネルギーをかけずに終わって欲しいと願うことが計画に影響を与えることになります。
また、具体的な計画をたてることによって、「この順番でやっていけばうまくいく」と錯覚がおき、かえって計画通りにいかなくなってしまうことさえあります。
計画通り進めるために
具体的に計画をたてることでうまくいかなくなるのであれば、「計画を立てない方がよいのか?」と思うかもしれません。
計画を武器にするための方法の1つとして「課題を分解する」というものがあります。
課題を複数の小さい課題に分解し、それぞれにしめきりを設けて作業を進めることで、計画通り進まなくなることが少なくなることがわかっています。
ここで注意すべきことは、課題を分解したことによって「簡単だ」と感じる流暢性が発生することです。
そこで、計画をたてるときに「障害になるもの」を考えるようにすると(難しそうだ・・・)と感じて流暢性を出にくくすることができます。
