わかっているのに間違えるワケ5
少し時間が空いてしまいましたが、アン・ウーキョンさんの『イェール大学集中講義 思考の穴』で引き続き学んでいきたいと思います。
損をしたくない!
人はネガティブな情報に過剰に影響を受けることがわかっています。
「ポジティブな出来事1回」と「ネガティブな出来事1回」が起きたとすると、ネガティブに感じることが多いということになります。
ネガティビティ・バイアス
このようにネガティブ要素を重視してしまうことを「ネガティビティ・バイアス」とよびます。
このため、同じことを言っているときでも「切り取り方」を変えると受ける印象が大きくなってきます。
たとえば
A:12%の割合で遅れて進行します
B:88%の割合で定刻通り進行します
このような2種類の表現があったとします。AとBは同じことを言っています。しかし、この場合「A」で伝えると悪い印象を受ける一方で「B」で伝えると良い印象を受けることがわかっています。
同じ評価ならどっちがよい?
ネガティビティ・バイアスの影響はあらゆるところに出てきます。
たとえば成績に関しても
A 国語:5 算数:2 理科:5 社会:4 平均:4
B 国語:4 算数:4 理科:4 社会:4 平均:4
このようなAとBという生徒がいたとします。この2人の成績を見て「どちらの方が優秀か?」とたずねられたらどのように考えるでしょうか?この場合、「B」の方が優秀だと答える人が多くなる傾向があります。
この場合はAの算数で1つ「2」という評価をとった方が、国語と理科の2つ「5」をとっているところより強く評価されているということが分かります。
損失回避
人は得をすることを望むより、損失を回避することを強く望みます。これはポジティブよりネガティブに強く影響を受けているということになります。
これを利用した営業の方法があります。
たとえば何かを購入したいと思った場合に
「機能Aをつけることで+10000円、機能Bを追加すると+20000円」のように、「オプションをつけることで追加料金が発生します」と説明されることがあります。
一方で、最初からオプションがすべてついた状態を提示し「機能Aはずすとー10000円、機能Bをはずすとー20000円」と説明をして、自分で外す機能を選択してもらうと使用する金額が高くなる傾向が見られました。
これは「このオプションがなくなると損するかもしれない」と思ったことにより機能を外しにくくなったことを原因の1つだと考えられます。
損失回避の怖い使い方
人が得をするよりも、損を回避したいと強く願うことから、報酬のタイミングを変えるだけで強い効果が出る可能性があります。
A:先に1000円をわたす。その後、できなかったら1000円返してもらう。
B:できたら1000円をわたす。
このように設定したとします。するとどちらの方が強いモチベーションになるでしょうか?この場合は「A」の方で(1度もらった1000円を失うのは嫌だ!)という気持ちがはたらくため、Aの方がうまくするための努力をする可能性が高くなります。
かといって、世の中全体で「A」のような報酬の支払い方をすると人々は常に「失うかもしれない」と感じながら生きることになりますので、「A」のような方法の方が優れているとは言い難いところはあります。
保有効果
持ち主が、自分の持っているものを高く評価することを保有効果といいます。
そのため、何かを売ろうとするときに「売る側」(持ち主)は「買う側」よりも値段を高く評価する傾向があらわれます。
これは、かつて人類が「何かを失う」ということが、即非常に危険な状況につながっていたことが原因の1つだと考えられています。
フレーミング効果
人が損を避けることだけを考えていると、結果的に損をする可能性もあります。
必要だと思っているものに対して「ネガティブなコメント1つ」によって(損をする可能性があるから購入するのはやめよう)と考えて、必要なものを手に入れることがなければ結果的に損をしているということがありえます。
このようなときに「フレーミング効果」を活用することで解決できることがあります。
フレーミング効果というのは、同じ情報でも、伝え方によって受け取り方が変わるというものです。
さきほどの例であったように
A:12%の割合で遅れて進行します B:88%の割合で定刻通り進行します
同じことを言っていても「切り取り方」によって受け取り方が変わります。
ようするに、(悪い評価にとらわれすぎているな)と感じた場合は、「良い部分」を切り取ることによってポジティブな印象になるということになります。
