わかっているのに間違えるワケ6
引き続き、アン・ウーキョンさんの『イェール大学集中講義 思考の穴』で認知心理学について学んでいきたいと思います。
最初に信じたことが強い
人は、自分が最初に信じたことが正しくなるようにものごとを解釈する傾向があります。また、詳しい情報を手にした人ほど、自分の信じていることこそが正しくなるように解釈し、自分の信じているものと逆のことは正しくないと考えるようになるようです。
だからこそ、色々なことを学び、様々な情報を知っている人は、自分の考えを変えにくくなる傾向が強くなります。
一貫性がある方が楽
このように自分の考えを変えないことによって不都合があるかもしれません。しかし、自分の考えを変えにくい傾向があるのは、そちらの方が頭の中が整理しやすいためです。
情報を得たときに、毎回判断を下していると時間とエネルギーを多く消費することになります。もし、情報が入ってきたときに「いつもと同じような話だ」と認識することによって楽に処理ができます。
「今回はA、次はB・・・」という処理を毎回することで、頭の中は混沌としてきますが、自分の信じていることと同じだと解釈することによって楽に処理できるということです。
自分と人は違う
自分の考えが変わらないことと同様に、相手の考えを変えることも非常に難しいです。
さらに、人に伝えたいことは伝わりにくいということも注意が必用です。
相手に「皮肉」を言うためのメッセージと通常のメッセージを送り、どちらかを判断をしてもらう実験を実施しました。すると、50%程度しか「皮肉である」かどうかを判断できなかったそうです。
これは普段から親しくしている相手かどうかにかかわらず、同程度しか伝わらないようです。ただ、「皮肉」を伝えるときに声の調子を変えた場合は、ほぼ正確に受け取ることがわかっています。
自己中心性バイアス
このようになる理由は自己中心性バイアスというものが原因の1つです。
自己中心性バイアスは、「自分以外の人も、自分と同じようなものの見方をする」と思い込むことです。人は自分の持っている情報で判断するにもかかわらず、自分とは違う情報を持っている他人も同じように判断すると考える傾向があるということです。
自分だけ答えを知っていて、その答えを説明して、他の人に当ててもらうというクイズをしたことがあるかもしれません。
このときは、「なぜこのように分かりやすく説明しているのにわからないのか?」と感じるかもしれませんが、これは自己中心性バイアスが理由となっています。
確実に、自分を伝え、相手を理解するためには?
「相手の立場になって考える」これはよく言われる一方で非常に難しいことではあります。(相手の立場になって考えている)と自分が思っているだけの可能性があるからです。
では、どうすれば自分の考えを明確に伝えることができるのでしょうか?
これについては「自分の考えを相手に推測させるのではなく、率直に伝える」ということが必要になります。逆に、相手が考えていることを理解するためには、相手が考えていることや信じていることを直接聞いて知ることが必要になるということです。
自分と相手が同じ知識を持っていたとしても、同じ考えになるとは限らず、相手のことがわかるとは限りません。
お互いの事実を明確に伝え合うことが、お互いを理解するためには必要ということです。
わかっていても我慢できない
人はガマンすることが苦手です。ガマンをするための効果的な方法として「注意をそらす」というものがあります。他のことに注意をむけることによってガマンすることができるということです。
気になることがあると決定できない
人は自分にとって重要な結果が、どうなるかわからない時は意思決定がうまくできない状態になります。
だからこそ人は「確実性の高いこと」が大好きです。
A:100%の確率で100万円がもらえる
B:89%の確率で100万円、10%の確率で500万円がもらえるが、1%の確率で0円になってしまう
このようなとき、あなたならどちらを選ぶでしょうか?
このときほとんどの人がAを選びます。次に
C:11%で100万円、89%で0円
D:10%で500万円、90%で0円
このような状況であるとDを選ぶ人が多くなります。
このように10%と11%の1%は気にならないのですが、0%と1%には大きな違いを感じます。それほど人は確実性の高いことが大好きなのです。
完璧にとらわれる必要はない
現在は「努力すればよりよい自分に変わることができる。だからこそ不断の努力が必要」という考えが唱えられることが多くなっています。
だからといって、自己管理を完璧にし、明確な意思決定を行い、先延ばしをせずに実行する・・・ことだけを重視してよいかどうかは分かりません。
常に目の前の課題や、より大きなテーマにむかっていくことに注意を向け、「今よりよくならなければいけない」と考えることで不安感が増すことがあります。
