下流ではなく、上流での問題解決3

 引き続き、「どのようにして問題を起こさないようにするか?」という点について学んでいます。それでは前回の確認をしておきたいと思います。

1 問題を解決するために集まったメンバーをまとめるためには、一人一人に(  )を与えることが必要になります。

2 問題が発生するということは、(  )がうまくいっていないということになります。

3 問題の中心を探すためには、問題を(  )にしてみるとよいです。

4 問題の中心がみえてきたら、問題の発生する(  )を高める要因と、下げる要因が何かを考えます。

回答例

1 (明確な)役割  2 システム  3 方程式  4 リスク

 いかがでしたでしょうか。それでは、引き続きダン・ヒースさんの『上流思考「問題が起こる前に解決する新しい問題解決の思考法」』で問題防止についてみていきたいと思います。

上流思考の成功は正しく測れるか?

 問題が発生したときに対応して解決する。この場合は「成功」と「失敗」がはっきりとわかります。

 一方で、上流思考の場合は成功かどうかがわかりにくくなります。

 そもそも、上流の段階で問題が発生することをくいとめることが目的です。問題が起きなければ「対策のおかげ」なのか、「偶然」なのか判断しにくいということになってしまいます。

 では、上流志向の成功と失敗を見るためにはどのようなことに注意する必要があるのでしょうか?

上流思考の失敗パターン

 上流思考において、うまくいっていないパターンがあります。

1 指標は改善したが、取り組みの成果と勘違いするパターン

 うまくいく、うまくいかないには「取り組み」と「偶然」にも影響を受けます。何かに取り組んでみた結果、前回より指標がよくなったからといって、取り組みがよかったかどうかすぐに判断できません。

2 短期的に指標が改善したが、長期目標は達成できていない

 長期目標を達成するために、チェックポイントとして短期的な指標を置いて状況をチェックしていくことがあります。

 短期的な指標がよくなったにもかかわらず長期目標が達成できない場合があります。

 小テストで満点を取るために、小テストの直前だけ徹夜をして勉強して良い点数をとっても、あまり記憶に残らず本番のテストで点数がとれないというような状態になることがあります。

3 短期目標が目的になってしまっている

 長期目標を達成することが目的であったはずなのに、短期目標ばかりに注意をむけてしまうということがあります。

 受験に合格するために、毎日課題を終える必要があるとします。そこで課題を終えることが目的になってしまい、解答を見てうつして終了という状態になってしまうと、課題は終わりますが受験の合格にはつながりません。これも失敗の形です。

定量的な指標の注意点

 うまくいっているかどうかを判断するために、指標は大切です。

 しかし、この指標を「定量的なものではかる」と質がおろそかになってしまうことがあります。

 「定量的なものではかる」というのは、たとえば問題集を「何ページ」解いたか、問題を「何題」解いたかというような量で判断することです。

 たとえば「問題をたくさん解いた方が評価される」という判断方法ですと、

①「1+1」を1000回解いた

②できなかった2問に再度取り組んで理解し、1問応用問題を解けるようになった

 という場合①の方が高い評価になります。1000回取り組んだ忍耐力はすばらしいですが、実際にテストにむけての実力がつくのは②だと想像できます。

指標を設定するときには以下の点に注意するようにします。

1 取り組み以外の、別の要因が関係した可能性はないか?

2 短期指標が、長期目標に関係のない可能性はないか

3 楽をして短期指標をクリアする抜け道はないか?

このような点に注意して短期的な指標を設定するようにしましょう。

意図していない悪影響を防ぐには?

 短期指標をクリアして、長期的な目標を達成したにもかかわらず、意図していない悪影響が出るということがあります。

 苦手科目の点数を上げるために、苦手科目だけを学習した結果、他の科目がおろそかになって全体の点数が下がってしまったということがあるかもしれません。

 このようなことを防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?

試行して、錯誤を繰り返す

 残念ながら、やってみなければ、どのような影響が出るかわからないということもよくあります。

 そのためには、試行してみて信頼性の高いフィードバックを得ることで次に何をするべきか考えることができます。

 試行するときには以下の点に注意します。

 ①過去に似たことを試したか

 ②試験的に実行できないか

 ③フィードバックに対して素早い改善ができるか

 ④意図しない害が発生したときにすぐに中止できるか

 これら、4つの質問のうち1つでも気になる点がある場合は試行を考え直す方がよいかもしれません。

起きていないことへの対策なんて意味があるのか?

 上流思考がうまくいったときに問題になることがあります。

 それは「問題など起きなかったではないか」と言われることです。

 社会問題に対してはこのような問題が発生してしまうことがあります。

 ある取り組みが成果を出し、社会問題が起きなくなった。すると「社会問題は起きていないから予算はださなくてもいいよね」となり、予算がなくなって取り組みを続けることができなくなってしまいます。その結果、また問題が発生するようになってしまう。

 だからこそ、問題が起きていたときにかかっていたコストと、問題が起きなくなって節約できたコストがあることを忘れないことが大切です。

社会問題だけではなく、個人の問題も上流で解決

 上流思考は社会問題だけではなく個人的な問題でも役に立ちます。

 自分自身であきらめている問題の中で実は解決できるものはないでしょうか?

 日常的に繰り返している問題が起きないようにすることはできないでしょうか?

 個人的な問題に対する上流思考のポイントは

 1 行動は性急に、結果は気長に

   効果はすぐに出るとは限りません。試してみることが決まったら行動してみましょう。

 2 大きな問題に対しても、まず小さな問題解決を

   大きな問題に対してはすごい解決方法があるのでは?と考えてしまいがちです。しかし10000人を助けるためには1人を助ける方法を知ることが必要です。

   まずは小さな問題を解決する意識を持ちましょう。

 3 試して、効果を確認してやりかたを変更していく

   試したことに対して、データをとってやり方に工夫を加えていきましょう。

 大きな社会問題の解決は、個人的な問題を解決する先にあるかもしれません。

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