ストーリーの秘話2
私たちは日常の中で、さまざまな情報を受け取っています。その中でも特に心に残るのは、単なる説明ではなく「ストーリー」です。ストーリーには、感情を揺さぶり、思考を促し、人を行動へと導く力があります。
今回も引き続き、アネット・シモンズさんの『プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える』で学んでいきたいと思います。
1. ストーリーとは何か?説明との違い
ストーリーとは、実際の出来事や架空の出来事を物語の形で表現したものです。説明とストーリーの違いは、次の点にあります。
- 説明:論理的・客観的に物事を伝える手段。
- ストーリー:情緒的・感覚的な表現が加わり、聞き手が自分事として捉えやすくなる。
例えば、「この製品は最新技術を使っており、高性能です」という説明よりも、「この製品を使ったおかげで、仕事がスムーズになり、家族との時間が増えた」というストーリーの方が、共感を生みやすくなります。
説得力のあるストーリーは、単に事実を並べるだけでなく、自分自身の経験や想像を交えて、テーマを伝えます。客観的事実に「いつ」「誰が」「どこで」という要素を加えることで、物語としてのリアリティが増し、聞き手の関心を引きつけることができます。
2. ストーリーの構成要素
ストーリーが説得力を持つためには、次の5つの要素が必要です。
- 時間(いつ)
- 場所(どこで)
- 登場人物(誰が)
- 行動(何をした)
- 結果(どうなった)
これらの要素が含まれることで、具体的なイメージを連想しやすくなり、聞き手が物語に引き込まれます。
例えば、「昨日、公園で子どもと遊んでいたとき、突然雨が降ってきて…」と話し始めると、聞き手はその状況を頭の中で映像化しやすくなります。
3. ストーリーの持つ力
ストーリーは、単なる情報伝達の手段ではなく、相手の思考や行動に影響を与える強力なツールです。ストーリーを使うことで、次のような効果が生まれます。
1. 人間味が出る
ストーリーには、話し手の個性や感情が込められます。ビジネスの場面でも、冷たいデータの羅列よりも、個人的なエピソードを交えた方が、相手の共感を得やすくなります。
2. 視点を広げることができる
ストーリーは、一つの視点に固執せず、多様な価値観を伝えることができます。たとえば、「ある人はこう考えたが、別の人はこういう視点を持っていた」という形で語ることで、聞き手に新たな気づきを与えることができます。
3. 間接的に伝える
直接的な指摘や指示は、相手に反発を生むことがあります。しかし、ストーリーを通じて伝えることで、聞き手に自然と考えさせることができます。
4. 自分で考えさせられる
画一的なルールを押し付けられると、人は思考停止しがちです。しかし、ストーリーは「答え」を示すのではなく、「考えさせる」力を持っています。
5. 目上の人の間違いでも指摘しやすくなる
ストーリーを用いることで、直接的に批判することなく、相手に気づきを促すことができます。例えば、「以前、ある上司がこういうミスをしてしまった話を聞いたのですが…」と話すことで、相手に柔らかく伝えることができます。
6. 命令ではなく要望を伝えられる
ストーリーを使うことで、指示を柔らかく伝えることができます。「これをやれ」と言うよりも、「以前、同じ状況でこの方法を試したらうまくいった」という話をする方が、相手に受け入れられやすくなります。
7. 否定を伝えやすくなる
「これはダメです」と直接言うよりも、「昔、こういう方法を試したけど、うまくいかなかった」というストーリーを使うことで、相手を傷つけずに伝えることができます。
8. 場の空気を変える
場が硬直しているとき、ストーリーは雰囲気を和らげる効果があります。ユーモアを交えたエピソードを話すことで、緊張をほぐし、コミュニケーションを円滑にすることができます。
4. ストーリーにできて事実にはできないこと
人が誤った判断をする原因の多くは、「すべての事実を知らない」ことではなく、「事実を無視したり、理解していなかったり、軽視していたりすること」です。ストーリーを通じて伝えることで、単なるデータでは伝わりにくい本質を理解させることができます。
また、ストーリーには強い説得力があるため、時として「正解」とされるものを無批判に受け入れてしまうリスクもあります。ストーリーを使う側も、聞き手が自分の頭で考える余地を残すことが重要です。
5.ストーリーの活用
ストーリーは、聞き手に「擬似体験」をさせることで、思考や行動を変える力を持っています。その力を活用することで、相手に共感を生み、柔らかくメッセージを伝え、視野を広げさせることができます。
ストーリーの強い影響力を悪用せず、聞き手が自ら考える余地を残しながら伝えることが重要です。適切にストーリーを活用し、より豊かなコミュニケーションを築いていきましょう。
