信頼できますか?2

「給付金の見送り」と国民感情──信頼は理性だけでは築けない

政府が経済対策として「一律給付金」を見送り、「補助金」という形を取る方針であるというニュースが流れました。

経済的合理性の観点から見れば、「必要な人に重点的に支援する」という補助金の形は理にかなっているように思えます。

しかし、多くの国民はこの選択に対して何となく「冷たさ」や「不公平さ」を感じているようです。

また、現時点では「給付金」そのものに対してすらよい印象を持っていないという場合もあるようです。

なぜ、お金をもらうことができるにもかかわらず不満を持つのでしょうか。

そこには「信頼」という感情的な要素が深く関わっています。

今回もデイヴィッド・デステノさんの『信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実』で「信頼」について学んでいきたいと思います。

人は感情で信頼を判断する

「信頼」と聞くと、論理的な判断や実績に基づいているように思えます。

しかし実際には、信頼の形成には感情が大きく関与しています。

心理学や行動経済学の研究では、「人は合理性だけでは行動しない」ことが繰り返し示されています。

有名な実験に「最後通牒ゲーム」があります。

最後通牒ゲームに見る「公平性」と「感情の影響」

このゲームでは、10ドルを分ける役と受け取る役の2人が登場します。

分ける側は自由に金額を分けることができ、受け取る側はその金額を受け取るか拒否するかを決めることになります。

もし受け取りを拒否すれば、双方とも0ドルになるというルールです。

理性的に考えれば、たとえ1ドルでももらった方が得になります。しかし、現実には、提案された分け前が「2対8」や「1対9」といった極端な場合、多くの人がそれを拒否する傾向がみられました。

なぜなら、「不公平に扱われた」と感じるからです。つまり、「金額」よりも「感情的な納得感」の方が、選択行動を大きく左右しているということになります。

政策も「感情」で評価される

この現象は、政策への受け止め方にも似た影響を与えていることが想像されます。

政府が「一律給付はしないが、必要な人に補助金を出す」と発表したとき、多くの人が「私は公平に扱われていない」と感じると、たとえ合理的な制度であっても、その政策全体に対する信頼が損なわれる可能性があります。

さらに、人は一度何かに対して「冷たさ」や「不信」を感じると、その感情を別の場面にも引きずってしまいます。

これは「感情の転移」や「フレーミング効果」とも呼ばれ、一度マイナスの感情を持つことで、政府の他の施策に対しても否定的な見方が強まることがあります。

そのため、これまでの経験によって生まれた感情が、「給付金」というお金をもらえる政策に対しての印象にも影響を与えた可能性があります。

「信頼」は一朝一夕に築けない

人は、生まれながらに他人を信じるわけでも、裏切るわけでもありません。

信頼は状況に応じて形成されるものであり、裏切られたと感じた経験はその後の判断にも強く影響します。

だからこそ、「公平に扱われている」という納得感が信頼にとっては重要だということがわかります。

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