わかっているのに間違えるワケ3
引き続き、アン・ウーキョンさんの『イェール大学集中講義 思考の穴』で認知心理学について学んでいきたいと思います。
「原因は・・・?これしかない!」
どんな出来事にも、原因となる可能性のあるものがたくさんあります。
人は原因を考えるときに、「それらしい原因」を選びやすいことがわかっています。どのようなものを理由として選びやすいのでしょうか。
・類似性
原因と結果が同じレベルと思う場合、原因だと判断しやすくなります。
原因だけが重く、結果だけが軽い。またはその逆の場合は違和感を感じます。
・十分性と必要性
原因が「その結果が起きる条件として十分だろう。」また、「その結果が起きるためには必要だろう」と考えられるときは、その原因は正しいと感じます。
・新近性
直近に起きた出来事が原因だと考えがちです。
・可逆性
人の力でおさえられないものより、おさえられるものを原因としたがります。
これらによって、たとえ間違っていても「なんとなく納得できるから」という理由で原因として考えてしまっていることがあります。
原因と結果
強くボールを打つと遠くへとびます。弱くボールを打つと近くへ落ちます。原因と結果は大きさが似ていることが多いです。
しかし、「原因と結果の大きさは似ている」と考えることによって、原因がわからなくなってしまうことがあります。原因と結果はつりあいが取れているとは限らないからです。
少しの原因で、大変なことも起きます。逆に少しの原因で非常に良い結果になることもあります。
十分性
何かの原因として「きっとこれが原因だろう」と、それらしいものが思い浮かんだとします。何かを原因と判断すると、他の可能性を考えなくなってしまいます。
そのため「努力して成功した」という人がいると
原因:努力 → 結果:成功
と考え、努力だけが成功の原因とみなし、「才能がない」と感じられやすくなるそうです。
内的動機と外的動機
何かが好きでやっていたことに、「報酬」を与えることでかえってやる気を失ってしまうことがあります。
それは
原因:好きだから → 結果:やっている
という状況から
原因:報酬 → 結果:やっている
のように考えてしまうためです。
必要性
「Aが起きていなくても、Bは起きただろうか?」
このように考えて、結果が違うとなった場合、その要素は原因となります。たとえば
寝坊していなければ(A)、遅刻をしただろうか?(B)
この場合、寝坊していなければ、遅刻していなかった可能性が高くなりますので、結果は「違う」となります。このように考えると
原因:寝坊 → 結果:遅刻
だということがわかります
しかし、これにより原因は寝坊だけにあると判断してよいのでしょうか?
もしかすると
・昨日のうちに準備をしていなかった
・道が混んでいた
という他の要素があるかもしれません。
異常性
また、めったに起きないことは「原因」とみなす傾向があります。
そのため、同じ出来事に対しても、人によって「原因」と感じるものが異なることがあります。
Aさんにとっては普通のことでも、Bさんにとってもめずらしいというものであれば、Bさんにとっては原因となりやすいのです。
もし自分の周りで、自分にとって考えられない因果関係を主張する人がいたら、その人の視点で見た世界がどのようなものか考えてみる必要があるかもしれません。
したことのせい
しなかったことよりも、「したこと」の方が原因としてみられやすい傾向があります。
これは「あんなことしなければよかった」という行動は思い出しやすいことが理由の1つです。
逆に、とれた可能性のある行動は数が多いため、「あのときしていたら」と考えるのは難しいのです。
「したこと」を原因として考える傾向のため、「しなかった」ことによる代償について忘れて、「しなかった」ことによる問題が発生してしまうことがあります。
新近性
最後に起きたことは原因とされやすい傾向があります。
AさんとBさんがサイコロを投げます。連続して同じ目が出ると大成功!というチャレンジをしたとします。
Aさんが先にサイコロをふり「1」がでました。続いてBさんがサイコロをふり「6」がでました。
このときどちらの方に責任があるでしょうか?このように考えるときに「Bさん」と答える人が多くなります。
しかし、Aさんが先に「6」を出せていれば大成功だったはずです。そのことは気にされず、あとでサイコロをふったBさんの方に原因があると考えられやすくなるのです。
直近のことだけに注目していると、過程での重要な要素のことを忘れてしまうことにつながります。
可制御性
自分でコントロールできることを原因としたがります。
人は様々なことに対して「なぜ起きたのか?」という理由を求めます。よい出来事がおきた理由がわかれば、同じことをして良い結果を繰り返したいと思いますし、よくない出来事がおきた理由がわかれば、繰り返さないようにしたいと思います。
「自分でコントロールできないこと」を原因としてしまうと次に活かせないので、「自分にコントロールできること」を原因としたがるのです。
「原因は1つ!」ではないので追求しない
答えが明確に見つかるものはなかなかありません。
「AをしたからBになった!」とそのときは思っていても、次は「AをしたけどCになった!?」となることもあります。
むしろ、この先同じような状況になることは少ないので、「原因は1つ!」と考えて徹底的に追求することにはあまり意味がないことになります。
何かが起きたときは「体験から少し距離をとって、他人の目で見ている」ということを想像することで新たな視点を手に入れることができ、感情的に行動してしまうことが少なくなります。
