科学的根拠で子育てをする方法4
今回の内容に入っていく前に、前回の復習をしておきたいと思います。
1 成績が( )くらいのチームで学習すると、学力が上がりやすくなります。
2 人は身近な人と( )して自分を評価するため、正しい評価を見誤ることがあります。
3 成績を知らせるときは( )と比べてどうなったかを伝えるようにすると良いです。
回答例
1 同じ 2 比較 3 前回
それでは、引き続き中室牧子さんの『科学的根拠で子育て』で教育経済学について学んでいきたいと思います。
教育政策について
これまでもたくさんの教育政策が行われてきました。教育政策はどのような影響を与えていたのでしょうか?
保育料の引き下げ
海外の話ではありますが、保育料を引き下げたことによる影響について研究があります。
・母親の労働参加率が高くなった
母親が子どもを保育所へ預けて働きやすくなったということを示しています。
・子どもへの影響
保育料が引き下げられたあとに、保育所へ通った子どもたちは、20代になったときの「非認知能力」「健康」「満足度」などによくない影響があることがわかりました。
まだ理由は明確にはなっていませんが、いくつかの説があるようです。
①保育料の引き下げによって多くの人が保育所を利用した → 保育所を増やす必要があったため、質が低い保育所ができてしまった
②保育料が低くなった → 保育の質が落ちていても、保育料が低いため気にしなくなった
保育の質が担保されていることで、教育は将来に良い影響を与えます。そのため、質が下がってしまうことでよくない影響が出てしまったということになります。
効果が低い幼児教育はある?
早い時期からの教育は、どのような影響があるのでしょうか?
こちらも海外の研究ではありますが「基礎学力」を重視した教育にあまり効果がないのではないかという結果がでています。
小学校に入ってから苦労しないようにするため、「読み書き・計算」の指導に多くの時間を割く幼児教育を行ったところ、初期では一時的なプラスの効果がみられましたが、すぐにその効果がなくなってしまったとのことです。
逆に、幼児期の子どもたちの年齢にそった関心や経験こそが大切だと考える教育を行ったところ、小学校入学後に学力が高くなり、効果が持続するという結果になりました。
「1人につき、1台の端末」の効果は?
現在では、1人につき1台のパソコンやタブレットを持ち、読み・書き・計算などが行われるようになっています。日本ではまだ始まったばかりのところもありますが、他の国ではどのような影響があったのでしょうか?
すでに実際している国の成果を分析してみたところ
「学力向上にはほとんど効果がなく、かえって低下させた」
という結果がみられたのです。しかも、地域によっては「宿題や読書の時間が減少し、ゲームやSNSを使用する時間が増え、政策は失敗に終わった」という報告さえありました。
デジタル教材には効果がないのか?
このように、せっかく子どもたちの能力を高めるために実施した「1人1台の端末」政策が無駄にならないようにするためにはどのようなことに気を付ける必要があるのでしょうか?
実際にデジタル教材を使用して、子どもの能力が向上したという例があります。その特徴は
「子ども一人一人に適した問題や教材を自動的に提供される」
というものです。このような仕組みで学習した子どもたちは、3ヶ月で算数や数学の偏差値が約6.0、国語は3.9も上昇したという成果がみられました。
つまり、デジタル教材によって「習熟度にあった指導」を行うことができれば成果が出る可能性があるということです。
デジタル教材がうまくいくとき、いかないとき
他にもデジタル教材を使用して効果があった例があります。それが
「デジタル教材の使用について、教員が適切な指導を行った」
という場合です。
デジタル教材を、子どもに自由に使用させた場合と、教員が主導してデジタル教材を使用した場合を比較しました。
すると、教員主導で、デジタル教材で学習した場合は学力テストの偏差値が3.0程度上昇しましたが、自由にデジタル教材を使用させた場合は4.3も下がってしまいました。
活動を強制させることによって
こちらも海外の研究ですが、「問題行動の矯正をするために、様々な活動の参加をほぼ強制にする」というプログラムが実施されました。
この結果、かえって問題行動が多くなってしまい、健康面でもよくない影響がでてしまいました。
この理由としては、活動が強制であったため、子どもたちの自主性が奪われてしまい、周囲に流されてしまいやすい人になってしまったことが原因ではないかと考えられています。
