お試しください!「投資の常識」2

市場サイクルと心理的要因を理解する

 投資の世界では、常に「次は何が起こるのか?」という不確実性がつきまといます。しかし、さまざまな可能性に備えて準備しておくことは、リスクを最小限にし、長期的な成功を実現するための大切な要素です。

 今回も、ハワード・マークスさんの『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』で市場に存在するサイクルの考え方、そして投資判断に大きく影響を与える心理的要因について学んでいきたいと思います。


1. 市場には必ずサイクルがある

 どんな市場も長い歴史の中で、必ず上昇と下降のサイクルを繰り返してきました。

 例えば、株式市場を見れば、バブル期とその崩壊、回復といったサイクルは誰もが目にしている事実です。

 歴史上の代表例として、1980年代後半の日本のバブル経済とその崩壊が挙げられます。

 バブル期には、楽観的な見通しから過剰な投資が行われ、最終的には市場の調整により価格が大幅に下落しました。

 このようなサイクルを理解しておくことで、「今は盛り上がっているから、このままずっと上がり続けるはず」という楽観的な誤信に陥るリスクを避けることができます。

 さらに、経済全体においても、景気拡大と景気後退が周期的に起こるのはよく知られています。例えば、景気拡大期には企業の業績が向上し、株価が上昇する傾向にありますが、一定のピークに達すると需要が頭打ちになり、次第に景気が悪化するという流れがあります。

 こうしたサイクルを把握しておくことは、投資家が未来のリスクに備える上で非常に重要です。


2. サイクルを忘れた時に起こる大きな利益と損失

 市場のサイクルを無視した投資判断は、大きな利益を得られる可能性と同時に、莫大な損失を被るリスクがあります。

 例えば、ある時点で周囲が「もうサイクルは終わった」と考え、新たな投資ブームに突入するケースがあります。

 しかし、実際には市場は依然としてサイクルの影響下にあり、結果として「バブル崩壊」が起こることも少なくありません。

 2008年のリーマンショックも、金融市場における過度な楽観主義とサイクルを無視した投資判断が引き金となり、世界中に影響を与えました。

 逆に、サイクルの転換点をいち早く捉えることができれば、損失を抑え、逆張りで大きな利益を得るチャンスが訪れます。

3. 振り子のような心理の揺れ動き

 投資では、しばしば振り子のように大きく揺れ動きます。良い状態が常に続くことはなく、どこかのタイミングでは悪い状況になります。そして、悪い状況も常に続くことはなく、また良い状況へと変化していきます。

 強気相場では、先見の明を持った一部の投資家が「状況はこれからどんどん良くなる」と判断し、次第に多くの人々がその波に乗ろうとします。やがて、誰もが「永遠にこのまま続く」と信じ込むようになり、楽観的なムードが市場全体を支配します。

 しかし、この心理状態に陥ると、いずれは調整局面が訪れるリスクを見過ごしてしまい、暴落が起こる可能性が高まります。

 一方、弱気相場では、少数の人が「このままでは終わらない」と警告し始め、やがて多くの人が状況の悪化に気づき、悲観的な見方が広がります。この時も、すべての人が「永遠に悪い状態が続く」と信じてしまうと、実際の市場の本質的価値が無視され、過剰な売りに繋がる可能性があります。

 ここで重要なのは、投資判断において群衆心理に流されず、冷静な視点を保つことです。例えば、2000年代初頭のITバブル期には、インターネット関連銘柄が次々と急騰しましたが、その後の調整局面で多くの投資家が大きな損失を出しました。


4. 心理的要因の悪影響をかわす

投資において、心理的な影響は非常に大きな役割を果たします。特に以下のような感情が投資判断を狂わせる要因となります。

  • 強欲
     いくら儲かっても、さらなる利益を追求しすぎるとリスクが膨らみ、結果的に損失に繋がることが多いです。たとえば、短期間で大きな利益を狙いすぎて、リスクの高い銘柄に過剰に投資してしまうケースがあります。
  • 恐怖
     市場が下落しているとき、冷静な判断を欠いて損切りを急ぐ傾向があります。実際に、株価が下がったときに「もっと下がるのでは?」とパニックに陥り、理論的な判断より感情で行動してしまうと、回復局面で大きな利益を逃すことにもなります。
  • 思いこみ
     自分の都合の良い情報だけを信じ、「そうであってほしい」と思い込むことで、現実に合わない判断をしてしまいます。例えば、自身が注目している銘柄の悪材料を無視して買い続けるケースが挙げられます。
  • 同調
     たとえ疑問があっても、多数派に従ってしまう傾向は危険です。群衆心理に流されると、真のチャンスを見逃すばかりか、逆に大きな損失に繋がる可能性が高くなります。
  • 嫉妬
     他の人が成功しているのを見ると、「自分も同じ結果を出さなければ」と焦ってしまい、無理な投資判断をしてしまうことがあります。
  • うぬぼれ
     成功体験が続くと、「自分だけは特別だ」と過信し、リスク管理を怠るケースも見受けられます。例えば、連続で利益を出していると、次の投資でも過剰に自信を持ってしまい、失敗するリスクが高まります。

 これらの心理的罠を避けるためには、冷静な自己分析と、常に「本質的な価値」に基づいた判断が必要です。実際に、長期的に資産運用を成功させている投資家の多くは、「市場は変わるもの」と常に自覚し、慎重な姿勢を貫いています。


5. 逆張りと本質的価値の見極め

「逆張り」とは、大多数の投資家が同じ方向に動いているときに、敢えて逆の行動を取る投資手法です。大衆の判断が必ずしも正しいわけではないという前提のもと、市場が過剰に悲観的または楽観的な状態になったときこそ、本質的な価値に目を向けるチャンスと言えます。

具体例としては、2008年のリーマンショック後、多くの企業が一時的に株価を大きく下げた場面があります。市場全体が悲観に陥っている中で、財務基盤がしっかりしている企業の株は、後に回復局面で大きなリターンをもたらしました。こうした場面では、多くの人が損切りに走る一方、冷静な判断を持つ投資家が「お買い得」と判断し、着実に利益を上げることができました。

また、テクノロジー関連のスタートアップ企業にも同様の傾向があります。たとえば、初期段階で市場がその技術の可能性を過小評価していた時期に投資し、後に技術が実用化されることで急成長を遂げた企業の例も数多く存在します。こうした事例からも、短期的な騒動や一時的な下落に惑わされず、本質的な価値を見極める姿勢が重要であることが分かります。


6. 我慢強く待つ

投資において成功するためのもう一つの重要な要素は、「我慢強く待つ」という姿勢です。

 市場の動きを無理に変えようとするのではなく、資産が自然と価値を反映してくる瞬間を待つことが大切です。焦って頻繁に売買を繰り返すと、ミスが発生する確率が高くなってしまいます。

 短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で物件の本質的な価値を評価し、適切なタイミングでの購入・売却を行うことが、成功の鍵となります。

 そのためには「売らなければならない」という状況を作らないこと必要になります。

 また、株式市場でも同様です。たとえば、ある銘柄が下落している場合でも、企業の事業内容や将来性に変わりがなければ、焦って手放すのではなく、むしろ市場が本来の価値を再評価するのを待つ戦略が有効です。自らの知識や情報収集を通じて冷静な姿勢を保つことが重要です。


投資には絶対はないけれど・・・

投資の成功には、常に変動する市場サイクルと、その中で揺れ動く人間の心理を冷静に分析する能力が求められます。

  • 市場には必ずサイクルがあり、上昇と下降が交互に現れることを理解する。
  • 周囲がサイクルを忘れたときに生まれる大きな利益と同時に、莫大な損失のリスクも認識する。
  • 振り子のように変動する投資家の心理に流されず、強欲、恐怖、同調といった心理的要因の影響を避ける。
  • 逆張りの戦略を通じて、大衆が見落とす本質的な価値に目を向ける。
  • 市場が自らの力で変わるのを待ち、我慢強く適切なタイミングを見極めることが、最終的に資産運用の成功に繋がる。

自らの感情に流されず、冷静かつ計画的に行動することこそが、長期的な成功への第一歩と言えるでしょう。


 このように、市場サイクルと心理的要因を正しく理解することで、いかなる不確実な状況にも対応できる柔軟な投資戦略が構築できます。

 今後も変わりゆく市場に対して、常に冷静な視点と長期的な視野を持ち続けることが必要です。

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